「 自衛隊には実質的に“出来ない” 北朝鮮に向かう船への臨検 」
『週刊ダイヤモンド』 2009年6月13日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 792
4月5日、北朝鮮は人工衛星と称して長距離弾道ミサイルを発射し、5月25日には2度目の核実験を断行した。
2006年の前回の核実験を機に、国連は北朝鮮制裁決議1718号を採択した。だが、北朝鮮はこの国連決議に違反し、強行策に突き進んでいる。
国連安全保障理事会は北朝鮮制裁向けの新たな決議づくりに取りかかっているが、北朝鮮の核、ミサイル開発を阻止するには、開発に必要な技術、機械、素材、部品、エネルギー、外資など、つまり北朝鮮へのヒト・モノ・カネの流れの完全な遮断が最も効果的だ。
北朝鮮のミサイルと核は日本にとって最も切迫した脅威だ。多数の日本人も拉致されたままだ。日本は米中をはじめどの国よりも現実の脅威に晒されている。その意味で、日本のヒト・モノ・カネの遮断の要求には正当、かつ合理的な根拠がある。
国連安保理では中国が北朝鮮への厳しい制裁に留保の姿勢を見せており、予断を許さない。仮に、日本の主張が通って全面禁輸措置を取る場合、日本にとって新たな問題が浮上する。
全面封鎖には陸海双方の輸送手段への検査が必要で、特に、北朝鮮の港に向かう船の臨検は欠かせない。そうしたとき、海上自衛隊にはきわめて多くの“出来ないこと”がある。元自衛官で軍事、戦略問題の専門家、潮匡人氏が語る。
「国際社会が一致して北朝鮮を取り締まる場合、どこまで効果的に船舶検査を行なえるかが鍵となります。わが国は『周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律』で、『実施の態様』を規定していますが、その内容は噴飯ものです」
船舶検査として出来ることは以下のように七段階に分類されている。潮氏が説明した。
「一は、船舶の航行を監視すること。二は、信号弾などの実弾の使用を除く手段で自己の存在を示すこと、です。
通常各国の信号弾は10発中1~2発が信号弾で残りは実弾です。日本の場合は、まず、第一歩で単なる信号弾や照明弾に限定しています」
工作船や海賊船らしき船に、臨検を前提に接近するときは、いつでも武力を行使できる構えで行くのが普通の国のやり方だ。日本は基本的姿勢から異なるわけだ。潮氏が続けた。
「三は、船舶の名称、船籍、出発地、目的地、積み荷など必要事項の照会。四は、船舶の停止を求め、船長等の承諾を得て、停止した船舶に乗船して検査、確認するというものです。
船が停止せず船長が同意しない場合、向こうの船に乗り移っての臨検は出来ないのがわかります。核やミサイル物資を積んでいるかもしれない船が、簡単に停船することは考えられないわけですから、わが国の現行法では、臨検は出来ないのです」
そこで船舶検査法は、五として次のように定めている。再び潮氏が語る。
「五、当該船舶の船長に対し、目的地の変更を要請する。六、目的地変更に応じない船舶の船長に対して、説得を行う、となっていて、まったく強制力がないのです。そして、以上のすべてが機能しないとき、七として、海自に許されているのは、『必要な限度において、当該船舶に対し、接近、追尾、伴走および進路前方における待機を行うこと』です。自衛隊は武力行使なしに、怪しい船にまとわりつくことしか出来ないのです。
武力行使を仕掛けられれば、自衛隊も武器を使用出来ます。ただし、その場合も『人に危害を加えてはならない』とされており、相手が工作員でも海賊でも、死傷させてはならないのです。これでは、他国の軍艦と一緒に北朝鮮関連の船の臨検など出来ません。国際社会から日本は口先だけの国かと言われるのは見えています」
国民も国土も守れない現行法の一日も早い改正が必要だ。
「北の船舶 貨物検査」 新法
とってもとっても大切な記事なのに、とってもとっても小さな記事です。 (4面の囲み記事) さらに、関連記事の2面はこれ。別の位置に続く記事で読みにくいことこの上ない記事で…
トラックバック by 「インシャーラー」 お元気ですか? — 2009年06月17日 22:29